8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
それを見たカイは、真顔になりフィオナに直角の礼をする。
「フィオナ様、俺も食べたいです」
「は?」
カイの目がいつになく真剣だ。
「カイさんは、おいしいものに目がないんです」とポリーが耳打ちする。
「イブちゃん。レモネード液と器、もうひとついただけるかしら」
「うん。待ってて!」
イブが持ってきた器を受け取り、ドルフに時を止めてもらって、もう一つ氷レモネードを作る。すぐさま食べたカイは、「美味。触感がいいですね」と一気に空にしてしまう。
すると今度は、孤児院の子供たちがウズウズとし出す
「僕も食べたい」
「私も」
「で、でも」
「いいよ。味見!」
イブのひと言で、イブたちが持っていたほうの氷レモネードが皆に回される。
どの子もおいしいおいしいと言い、その声を聞いた広場の人々がいつの間にか列をなしていた。
「俺にも食わせてよ」
「いくら? 買うよ」
「え、えっと」
フィオナはたじろいだが、イブの母親は目を輝かせた。
「お嬢さん、同じものは作れるかい?」
「えっと。レモネード液があるなら」
「もちろん。たくさんあるよ。どうすればいい?」
「でしたら……、ボウルか金属製の箱かなにかを貸していただけませんか?」
フィオナはレモネード屋の露店の内側に入る。レモネード液と炭酸水が寸胴鍋の中にどっさりとあった。フィオナは炭酸水の方に氷魔法をかける。
キンと空気が冷え、サラサラの氷が出来上がった。
「できました。これをカップに入れてレモネード液を濃い目にかけてください」
「さあ、いらっしゃい、氷レモネードだよ。今日だけの特別販売だ!」
商魂たくましいイブの母親は、掴んだ客は逃さないとばかりに大声で宣伝する。
「俺も手伝う」
「私も!」
気が付けば、孤児院の子供たちも巻き込んで、氷レモネードの販売が始まる。