8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「私が手伝うのは、これ以上は無理よ。……でも、氷を安価で入手する方法がないか考えてみるわね。塊の氷を手に入れて、販売する前に細かく削ればいいと思うの。氷を削る機械は、たぶん金属加工の業者に頼めばできると思うわ。……私がいなくても、続けられる方法を考えないとね」
イブの母親は残念そうな顔をしたが、やがて「機械の設計はこちらで考えます」といった。
「そうね。今度また相談しましょう。ポリー、悪いのだけど、サンダース商会を窓口にしてもいいかしら」
「もちろんです。父に言っておきますね」
「お姉ちゃん、もう行っちゃうの?」
「ええ」
イブが見上げてくる。フィオナはほほ笑んで彼女の頭を撫でた。
「ありがとう。お姉ちゃんのおかげで、今日は楽しかった」
イブの笑顔が今日一番うれしい。イブだけじゃなくどんな子供たちにも、笑っていてほしいと、フィオナは素直に思った。
(自分の国民……か)
一人ひとりと知り合えば、愛着が生まれる。
「みんなが幸せになれるといいわよね。きちんと仕事について、学校にも行けるように」
数人なら、施しで救うこともできるだろう。しかし、フィオナが持つ財源にも限りがあるし、王族としては、手の届くところだけを見つめていては駄目だろう。
平民たちが、自分たちで生活をしていけるように、稼ぐための手段、そのための学力を身に着けさせることが大事なのだ。
フィオナが……王家のものがやるべきことは、きっとそういうことなのだ。施しではなく、彼らの自立を支援することが重要なのだ。
ひとりごとのようにそう言えば、「そうですね」とポリーがほほ笑む。「孤児院事業はそのための一歩じゃないですか。がんばりましょう」
「そうですよ。俺、また氷レモネードが食いたいので、ぜひ先ほどのお店にはがんばっていただきたいです」
元気なポリーと食い気いっぱいのカイに勇気づけられた気がして、フィオナの足取りは少し軽くなった。