久須栗小5年2組のくすぐり物語
 あの日以来、4人でいるといつもくすぐられる。
 くすぐられているときは、楽しいのと苦しいのが入り混じった不思議な感情に支配される。もっとも、くすぐられている最中にそんなことを考える余裕はない。ただただ一葉と二花の指から逃れようと暴れるのみである。

「きゃははっ、はぁああああ!ははっはああああははっはっはは!!やめてぇええええええええ!!」
 椅子に座らされ、背もたれの後ろで両手をつかまれている。この体制ではくすぐりの魔の手から逃れることはできない。少しでもくすぐったさから逃れるために、足をバタバタさせている。
「どこが一番くすぐったい?」
 一葉が意地の悪い口調で聞く。もちろん、くすぐりの手は止めない。
「わっ、脇腹!!ははっはああああははっはっはは脇腹は、ほっ本当にぃくすぐったいからぁぁああああっ、やめてえええええええええ!!」
 一葉と二花の顔がにやりと笑う。
 4本の手が脇腹へと集中する。
「いいこと聞いちゃった」
「ちょっと!本当に無理だからやめてっ、きゃははっはっははああああはっはかあははあぁはあああ!!」
 一番の弱点である脇腹を20本の指で責められ、美穂の顔がよだれまみれになる。

 楽しくて苦しい、美穂にとっては永遠のように長く感じられる昼休みのじゃれ合いを遠くで眺めている人影があった。 
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