君となら、死ねるかも。

「……つまり、それ、私じゃなくてもよかったよね」


顔を背け、誤魔化すために口を開いた。


「まぁ、ぶっちゃけそうだね」


「……。否定してくれたっていいのに……」


真っ先に肯定しやがった。悔しい。というか、優しくない。全体的に意地悪だ。嫌いじゃないけど。好きだけど。


「いやほら、本日の営業は終了しましたので?」


彼は、とぼけたような、おどけたような口調で言う。そっくりそのまま返されたセリフに、思わす溜め息が出た。


「だから、明日になったら否定するかも?」


「明日かぁ」


「明日だよ。……どう足掻いても明日は来るよ。そういうもんだから」


古瀬くんは、一度、体温を確かめるように私の手をぎゅっと握って、それから、ゆっくりと離れていった。するりとほどけた指の先には、まだぬくもりが残っている。
< 11 / 12 >

この作品をシェア

pagetop