君となら、死ねるかも。
「……つまり、それ、私じゃなくてもよかったよね」
顔を背け、誤魔化すために口を開いた。
「まぁ、ぶっちゃけそうだね」
「……。否定してくれたっていいのに……」
真っ先に肯定しやがった。悔しい。というか、優しくない。全体的に意地悪だ。嫌いじゃないけど。好きだけど。
「いやほら、本日の営業は終了しましたので?」
彼は、とぼけたような、おどけたような口調で言う。そっくりそのまま返されたセリフに、思わす溜め息が出た。
「だから、明日になったら否定するかも?」
「明日かぁ」
「明日だよ。……どう足掻いても明日は来るよ。そういうもんだから」
古瀬くんは、一度、体温を確かめるように私の手をぎゅっと握って、それから、ゆっくりと離れていった。するりとほどけた指の先には、まだぬくもりが残っている。