君となら、死ねるかも。
「だから、コレは没収です」
「あっ」
彼は、つかつかと私の席に近寄り、ペンケースの下の便箋を、ピッと素早く抜いた。しまった、油断した。……いや、たぶん、最初から、彼を止める気なんてなかった。
それでも、そう思われるのは癪だから、形だけでも、と手を伸ばす。もちろん、届かない。彼は、私との身長差を利用して、爪先立ちしても届かない高さまで、それをひらひらと持ち上げてしまう。
見上げると、彼はやっぱり、してやったりと言わんばかりにニヤニヤと私を見ていた。
「後で恥ずかしくなるようなものは、残さないほうがいいらしいので?」
「む……」
最後の最後まで、自分で自分の首を絞めることになるとは。……彼のせいで、最期ではなくなった。まったくもって遺憾である。
けれど、てっきり処分されるものだと思っていた便箋は、破られも捨てられもせず、綺麗に半分に折られてから、丁寧に古瀬くんのかばんにしまわれた。
いつか。いつか彼が、私の便箋を、もう一度私の前に出すことがあったら。そのとき、私は、彼についていくのだろうか。
……君となら、たぶん。
fin.