君となら、死ねるかも。
「……そういう、後で思い出したときに恥ずかしくなるような発言は控えたほうがいいと思う」
「えっ辛辣すぎない!?もっと優しくしてよー」
小さな、小さな声だった。風が吹けば、掻き消えてしまうほどの。伝えるつもりで口を開いたわけじゃなかった。
それなのに、彼はそれを聞き逃さず、まるで最初から耳を澄ませていたかのように、瞬時に反応した。
「本日の営業は終了しました」
「優しさ営業だったの!?」
叫び、彼は勢いよく振り返った。がたっ、と、彼の足が当たった机がわずかに動く。
一応言うと、彼とは別に仲良しな関係ではなかったし、私の記憶の中では、ちゃんと話したのも片手で数え切れるほどしかない。
私なんかとは、常に真反対の位置にいる人だった。人気者の彼と日陰者の私だった。だから、ずっと一方通行だと思っていた。矢印がこちらに向いたり、世界が交差したりなんて、そんなことは起こるはずがないんだと。そう思い込んでいた。
矢印はこちらを向いていた。だから、うまく呼吸ができなかった。