君となら、死ねるかも。

「明日にはうわさになるかな。いや寧ろ俺らで広めてやろうぜ」


”明日”


何気なく発されたその単語に、ぴくりとからだが反応する。


「……古瀬くん一人でやれば。私は知らない」


「えー、つめたー」


いまどきピュアな恋愛してるんだから放っておいてあげたら。


この場でそんなことを返せる余裕なんてなかったし、余裕があってもたぶん私はそれを言わなかった。古瀬くんも、奥手な二人を本気でからかおうだなんて、きっと思っていない。


それでも、冗談にそれっぽく返せなかったことが、割とショックだった。


「わっ」


一瞬、強い風が吹き込んで。私は、反射的に目をつむった。



目を閉じて、耳を塞いでいられたら、きっと楽だった。けれどそしたら、彼の顔も声も、何もわからないままだった。



手に、ふわりと感触があって。驚いて目を開けると、窓にかけていた右手に、彼の左手が重ねられていた。


パッと顔を上げる。乱れた髪、震えたスカート、彼の瞳に私が映る。
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