上海snow
ぷしゅ。
バスが人民広場に到着する。私は何も無かったかのようにすらり、と席を立ち埃臭いバスを降りる。
そして。
明るく彩られた街の中へ溶け込む。
街並とは対照的に寒々しい空色。空から落ちる重い影が人々の顔も暗く見せる。寒さで強張った道行く人の顔は、目だけがぎらぎらと鋭い。
私はなるべく目を合わせないように足早に歩く。
途端、空からふわりふわり、何かが落ちてきた。
「雪。」
私は顔を埋めていたマフラーから少しだけ顔を出し、雪を眺める。
手袋を外し、そっと雪を掌に乗せ溶ける様を楽しむ。いつのまにか雨は雪に変わり、その雪は急ぐ人々を立ち止まらせ、皆に平等に降り注いでいた。
一斉に首を空に向け、手を伸ばす様は、白い天使が舞い降り、何か神々しいものを受け取る儀式の用で。
街はそれでも動きだす。見えないチカラに押され、流れ、この膨大な人々が納まる場所へ。
こんなにたくさんの人がいる中で、私は唯、孤独だった。
雪は街を人を浄化し、色んな想いを残し消えてしまう。
この街で私を知る人は一人もいない。
でも・・・
私は歩き出す。
小さな足で、小さなカラダで。前に進むしか無いのだから。
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