笑っちゃうくらい解りにくいアイラブユー
「夕飯のあとにお話があります」
帰宅してすぐに言われたその言葉に、びくりと肩が揺れる。
「……わ、かった」
「ありがとうございます」
妻の家出事件から、およそ一年と四ヶ月。
彼女との結婚生活は一変した、と言えるほど生活サイクル自体は変わっていない。けれど、精神面で言えば、僕は彼女への愛を隠す必要もなくなったし、子供を授かることに対する不安や恐怖が消えて、寧ろ欲しいと乞い願うようになった。
とはいえ、願ったからといってホイホイと手にできるものではない。一年と四ヶ月。僕らは未だに授かれてはいない。互いの誤解をときほどいて半年経ったころに、一度検査を受けた。自然に子供を望める身体なのかどうかを、互いに。結果は、ふたりとも望める身体だった。双方、もしくは、どちらかが望めない身体だった場合は医学に頼ろうと事前に相談していたが、それは杞憂に終わった。
「き、がえて、くるよ」
「はい。分かりました」
概ね、彼女との結婚生活は上手くいっている。
そう思っていたのは、己だけ、だったのだろうか。