笑っちゃうくらい解りにくいアイラブユー

「大袈裟ですよ……もう。私だって、あなたの、煌明さんの妻になれて、家族になれて、そして母親にしてくれて、すごく幸せです。すごく、感謝しています」

 くすりと笑った妻は、いつも以上に美しい。

「色々と、準備をしなくてはいけないな」
「そうですね」
「明日、休みを取るよ。デートもかねて、ベビー用品を見に行こう」
「そんな急に休んではいけませんよ。それに、まだ性別は分かってませんから、もう少ししてからにしましょう? ね? 赤ちゃん達は逃げませんよ、お父さん」
「っ、そ、そうか、」
「ええ」

 大抵の場合、行動は早い方が良い、というのは僕の持論だ。無論、時期を見計(みはか)らった方がいい場合はそうするが、産まれてくる子供達のことに関しては早いも遅いもないだろう。そう思っての提案だったのだが、やはり妻は一枚、否、十枚くらい上手(うわて)だった。

「ひとりで、買いに行ったりするのはナシだぞ?」
「ええ、分かってます」

 にっこりと微笑んだまま(さと、)され、不承不承、頷く。

「約束だ」
「はい、約束です」

 小指と小指を絡ませて、お決まりのセリフを吐いて、顔を見合せ笑い合う。
 幸せ。
 その、たったの一言を味わい噛みしめているこのときの僕は、浮かれるあまりベビーベットを買って帰宅した翌日の夕方、「夕飯のあとにお話があります」と満面の笑みを浮かべた妻に出迎えられることをまだ知らない。


 ー番外編 終ー
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