君色を探して





翌日。
まるで一部始終を見守っていたかのように、ふらりとロイが現れた。
互いに何も言わなかったが、自然と二人の足はそこへ向いていた。


「上手くいったみたいだね」


祝福するのでもなく、寧ろ不快そうにロイは吐き出した。


「アルみたいな男が目覚めると、手に負えなさそう」

「……何がだ」


久しぶりに共に訪れた部屋には、相変わらずあの椅子がふてぶてしく場所をとっている。


「べっつにー。僻んでるだけだよ」


堂々と認めるロイに苦笑する。
これは、どうにかしてやらないと。
彼に頼りすぎるあまり引き留めていたが、そろそろ限界のようだ。


「あーあ……っと」


側にいない婚約者を想ったのか、大きく溜息を吐き――そこに腰を下ろした。


「……どうだ? 」


昔と同じ問いかけを、彼は覚えているだろうか。
あの時と同じ無表情だが、その顔つきは随分頼もしくなった。


「やっぱり、ただの椅子。僕には必要ないや」


スラリと長い足を組み、面倒くさそうにロイは言った。
だが、辺りを見渡す瞳は、いつもと変わらずに澄んでいる。


「……本当に感謝してるよ。兄さんがいたから、成し遂げられた」


そしてサッと立ち上がったかと思うと、何故だか彼は跪いたのだ。


「感謝している。貴方が兄であることに、王様役を引き受けてくれたことに。……ありがとう、兄さん」



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