君色を探して


変り身の早さに呆れてしまうが、彼の苦悩も分かる。
身を切られるような思いで、ジェイダと別れてきたのだから。


「兄さん」


呼びかけられて目を向けたが、ロイはこちらに背中を見せたまま。


「今まで付き合ってくれてありがとう。……これからは僕の夢じゃなくて、どうか自分の幸せを見つけて」


ロイの夢。
その中には当初、彼自身の欲しいものは含まれていなかったけれど。


「嫌々付き合ったつもりはない。私の夢でもあった……それだけだ」


アルバート王子ではなく、その奥にいる男を想ってくれるひとがいて本当によかった。


「エミリアに愛想尽かされないようにね」

「そっちこそな」


ようやくこっちを向いたかと思えば、ニヤリと意地の悪い笑み。


「僕はジェイダに優しいもの。そういえば、あれからあんまりエミリアを見ないけど? 」

「風邪気味のようだ。医師に診てもらわねば……お前の相手をしている暇はなかった。さっさと準備をしろ」


どうみても怠そうなのだが、エミリアに頑なに拒否されていたのだ。
だが、問答無用で医者を呼んでしまうことにしよう。


「はいはい。どうせ、お邪魔虫もついてくるんたろうからな。じゃあね」


――兄さんも、幸せにね。


「ああ」


ロイを見送って、少しだけぼんやりする。


(……医者を部屋に連れていくか)


新たな幸せはもう、すぐそこだ。






【Alfred・終】





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