君色を探して
無視したも同然だったのに、彼は嫌な顔ひとつしなかった。
それどころかふと微笑まれ、チクリと罪悪感が胸を差す。
(……いつまで、こんなことしなくちゃいけないの)
ほんのちょっと、
「いいな」
「素敵だな」
そう、男性に対して思うだけで。
恋愛感情が芽生えた訳でもないのに、とてつもなく悪いことをしたような気分になるのだ。
(駄目。後で辛くなるんだから)
そんな防衛本能すら働いてしまう。
仲良くなっても、好きになっても――結ばれることは許されないのだからと。
イライラして、いっぱいいっぱいで、壊れてしまいそうだった。
いっそ何もできないくらい壊れてしまえば、役目も放棄できるだろうか。
そうも思ったけれど、幸か不幸かジェマはそれほど弱くもなければ、勇気も持ち合わせていなかった。
(……何よ。口で文句を言うのは簡単だわ)
勝手で無責任な男たちの発言に、あの日ついに我慢できなくなった。
どうして、祈り子は女だけなのだろうか。
そんなふうに隣国の悪口を言う声が出るなら、代わりに雨を願うくらいしてくれたらいいのに。
そう喚いた後、一息吐いてから思う。
自分も同じだ。
彼らと何も変わらない。
自分が選ばれてしまいそうだから、怒鳴っただけ。
(……最低)