君色を探して


その夜、二人が仲良く夢の中にいる時間もジェマは悪戯っぽく続けた。


『レジーはジェイダを連れて行く気、満々よ。ロイくんを驚かせるんですって』

『あいつは……弟ができて、はしゃいでるからね』


レジーは近頃、背もぐんぐん伸びてきた。
ロイの前では格好をつけて、一丁前の男気取りだ。
まだ小さい妹の相手では、少し物足りなかったのかもしれない。


『ええ。同年代の友達がいなかったから……』


そこまで言って、ジェマが口をつぐむ。
何の気なし出た言葉が、その原因を思い出させてしまったのだ。


『ここにいたから、ロイにも会えた。きっとそれが一歩になるって……僕は信じていたいんだ。何より……』


――君がいたから、この愛しい存在たちにも会えたんだよ。

こんなふうになると、ジェマは頑なにこっちを見てはくれなくなる。


『ジェマ』

『……………』


ほら、返事さえしなくなった。


『ジェマって』


無視しているのではない。
この愛してやまない強情やさんは、すぐには泣いてくれないし、甘えてもくれないのだ。


『後悔しないで』

『……っ、そんな、私のせいで……っ』


先は言わせなかった。

ジェマのせいではない。
悲しくなることも、大変なことも多いけれど。
それを嘆いて、今ある幸福を台無しにしたくはなかった。

大切なひとをこうして抱いて、口づけているのに。
悲しみに溺れるなんて、どうしても嫌なのだ。


(君もそうでありますように)




< 115 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop