君色を探して


大切だから、何よりも愛しいから。
だからこそ奪い去るなんて、今まで思いもしなかった。

奪うものは奪い返される。
憎めば、相手からも憎まれる。
そんな終わりのない争いを始めてはいけない。
その気持ちに嘘はない。それでも――。


(これだけは譲れない)


唯一奪って手に入れた彼女は、申し訳なさそうにこちらを見上げていた。


(……男に押し倒されて、どうしてそんな顔するの)


夫とはいえ、突然押し倒されたのなら抗議したって怒ったっていい。
なのに彼女は、まるで今にも謝りそうな表情を浮かべるのだ。

許されるなら、奪いたかったのだ。
ただし、赦しを請うのは国でも神でもない。


『ジェマ』


ひとりの女性である、彼女自身だ。


『ロドニー……』

『待たない。……ごめんね』


まだ謝りたがる彼女を遮る。
先に謝ってしまうと、困ったような少し怒ったような表情をして。


『その……待って、なんて頼んでないけど』


この雰囲気を、一気に明るくしてくれた。


『なら、よかった』


この気持ちに、重苦しい空気はいらない。
クスクスと笑いながら、しかし心の中で彼女に深く感謝して――ロドニーは唇を寄せた。

可能な限り、この想いを込めて。




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