君色を探して



・・・


『ねぇ、ロドニー』


もう一人の息子、大切な友人の声に我に返る。


『ん? 』


いけない、いけない。
子供の側で、一体何を思い耽っているのだろう。
それにしても、やっぱりジェマは素晴らしく。
もちろん、ずっと想っていた女性だから満たされるのだけれども。
しかし、子供の前で思いだし笑いはよろしくない。


『ロドニーの奥さんってキレイ? 』

『え? ああ。僕には勿体ないくらい美人だ』


子供とはいえ、ロイも男の子。
女性に興味があるのも自然なことか。


『ふーん。でも、僕はともかく、レジーの前でそのニヤニヤしすぎな顔はやめた方がいいよ。昨夜、何があったか知らないけど』


『……っげほっ……!! 』


ゲホゲホと咳き込むのを、呆れたようにチラリと見てロイは続けた。


『別に、夫婦なんだから普通なんじゃない? ……たぶん、世間ではさ。ただ、その顔は酷いよ。ロドニー』

『………あのね、ロイ。君、いくつ? 』


気をつけようと思った矢先、先制攻撃を食らってしまった。


『……まぁ、僕はあんまり、“普通”なんて知らないけどね』


(……ああ、そうだった)


レジーと遊ぶ彼は、普通の子供そのものだけれど。
時折こうして、ロイの横顔は翳るのだ。


『でも、いいな。好きなんだね』

『……うん。好きだ』


羨望の目が心を締めつける。
答えに少し迷ったが、ロイにもジェマにも嘘は吐けない。


『……僕もいつか、そんな気持ちになれるかな。僕を見てくれる子に逢える……かな』


無意識だろうか。
ロイはそう問いかけながら、自らをじっと見下ろしていた。


(ロイ。君が抱えているのは、やっぱり――……)


『必ずね。君は自分で思っている以上にいい男だ。自分を過小評価しすぎると、本当に小さくなるぞ』


(自信をもって。何も持たない君だって)



――愛される心をもった人間だ。




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