君色を探して
然程今は触れていないのに、否、だからこそなのだろうか――頬はより赤みが差し、いっそう体温は高くなり――彼女の心臓の音が聞こえてきそうだ。
女性は不思議だな、と思う。
その最中だけでなく、こうしてのんびりしている時ですら、黒い瞳を潤めてくれて。
(……って……)
そんなのジェイダだけではないか。
そういう面で不自由を感じたことはなかったが、これまで黒い目をした女性と付き合った――関係をもったことはなかったのだから。
つまり。
「僕も初めて……なんだろうな」
「………嘘つき」
一人言にジェイダが過敏に反応した。
(……やば)
ふいに漏れた言葉を呪っても、既に遅し。
蕩けそうな瞳はどこへやら、ジロリとこちらを睨んでくる。
「考えないようにしてたのに……! どうせ、モテモテだったくせに、何でそういう嘘を……!! 」
どうやら、心配させていたらしい。
それも当然か。
恋人――婚約者をひとりにするには、随分長い時間が経っていたのだから。
「誓って言うけど、君を裏切ったりしてないよ」
だから、できるだけ不安を拭えるように、黒目をじっと見つめた。
「それは、分かってるけど」
そうは言っても、女性遍歴は気になるものか。
彼女の初恋からこれまでを、どうでもいいとはっきり言うことはできないのと同じ。
「……まあね、モテたんだろうな。アルバート王子はね」
ジェイダに逢う前、自棄になっていた時期もあるし――彼女に言うのは憚られるが、立場的に断れなかったことも、断らなかったことも多々あった。
「でも、ロイを好きになってくれたのも……僕が好きになったのも君だけ」
瞳の揺れ方など、かつて気にしたことがなかった。
だから、思い浮かぶのはいつだって、この色。