君色を探して


「欲しかったよ。本当に君が」


トスティータのこと、クルルのこと。
公務、雑務。その他、たくさんの考えるべきこと。

それらを詰め込めば、以前はそれで手一杯だった。
誰かを愛することも、自分を――ロイという男を見てもらえないことも、時折頭を過るだけで悩むには足りなかった。


「何で手離したんだろう。君が逃げそうになっていたのは気づいていたのに。閉じ込めてたら、もっと強引になっていたら……」


――今頃、僕のものになっていたかも。

何をするにしても、ジェイダが思い出された。
恋しくて、早く逢いたくて――あまり見せずにいたい、ロイ――もしかしたら、アルバートの部分が込み上げてくるほど。

彼女を行かせたのは、正しい選択だった。
苛立つくらい、正解だ。


「嘘くさいかもしれないけど……君のことでいっぱいだった。他で埋めたりするほど馬鹿じゃないし、悲観してもなかったしね」


ジェイダがいたからこそ、二国の関係改善は早まるのだ。
身勝手かもしれないけれど、突き動かしたのはそれが大きい。


「私だって……そうだったわ」


何故だか、しゅんとしている彼女に苦笑する。


「……そんなに聞きたいかな。はっきり言って、君に逢うまでの僕のことなんて面白くないよ? 」


硬めの髪に寝癖がついている。
ずっとこうやって独占していたから、仕方ないか――そんな何てないことを思いながら、覚悟を決めた。


「だって、ロイのことだから……」


そんなことを言われたら、話すしかないではないか。



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