君色を探して


思い出したくても思い出せない母のことや、
忘れたくても忘れられない父のこと。

どちらを想っても、まだこの胸は痛みを覚えてしまう。
それは恐らく、けして消えてはくれないだろう。だとしても――………。


「いつかは、きっと」


上から幸せで覆うことは、きっとできる。
今こうして、まろやかに胸を占めているように。


「でもその前に、もう少し二人きりを味わいたいかな」


丸い肩に唇を落とせば、今度こそジェイダの頬に朱を注いだ。
その変化が楽しくて、調子に乗って更に近づくと。


「~~っ……」


枕元にあった時計が、ガツンとロイの頭に落ちてきた。


「え? 」


ジェイダが驚くのも無理はない。
一体全体どういう位置関係で、まるで殴るように頭に降ってきたのか。
いや、そもそもこの時計はいつもこの部屋にはないはず。
どこからか落ちてきた時計は、まるで邪魔するような、それともいい加減にしろと言われるような――……。


「………………ロドニー? 」


(………んな訳ないよな。まさか、ないない……)


「?? 」


耳に入らなかったのか、ジェイダが首を傾げている。
その様子は可愛らしいし、胸元を隠した布団が僅かにずれてきているのを発見してしまったが。
今は亡き、もしかしたらそこにいるかもしれない舅を思うと鎮めざるを得ず。
ロイは唸りながら、うとうとし始めた妻を抱きしめるのだった。






【Roy・終】




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