君色を探して
・・・
瞼が重くて、目を開けていられない。
手足も同じくらい重すぎて、マロはそこに倒れこんだ。
どうやら、小動物らしからぬ動きをするのも――人間に話しかけるのも、もう無理のようだった。
(ま、もういいでしょ。本当、疲れた)
ジェマとロドニーの伝言は伝えた。
悲しさも寂しさも蘇るかもしれないけれど、彼らならきっと勇気に変えてくれる。
(この姿、わりと気に入ってたから名残惜しいけどね)
ジェイダの側はもちろん、ロイと一緒にいるのも似合っていたはずだ。
そして、誰より嬉しかったのは――。
「お疲れさま、マロ」
キミの手のひら。
《ジェマ。迎えにきてくれたんだ》
神様も、なかなか気の利いたことをしてくれる。
いや、幻だとしても構わない。
最後に彼女を感じられるのは、最高の贈り物だった。
「あのね。僕もいるから」
余計なおまけが付いてきたとしても。
《それはお願いしてなかったのにな。とにかく……消えてしまう前に逢えてよかった》
今はまだ、全ての問題が解決したのではなくても。
そうなるには気の遠くなるような工程があり、恐らく長い年月を必要とすることも分かっている。だとしても――。
《すっごく大きな一歩だ。よかったね》
二人とも、無言で微笑んでいた。
できることなら、彼らも同じ幸せを味わってほしかったけれど。
ここで辛い記憶を辿るのは、誰も望んでいなかった。もちろん、マロ自身を含めて。
《……じゃ、本当の本当におやすみ。ボク、本気で限界》
もう尻尾だって、ピクリとも動かせない。
ジェマの心地いい声が、更に眠りへと誘っている。
「……あ、それなんだけど」
「ロドニー、今は休ませてあげましょう。マロだって、すごく頑張ったんだから」
(うん、頑張ったよ。ロイやジェイダほどじゃないけど……あの子たち、自分の望みは放ったらかしなんだもの)
「おやすみ、マロ」
ジェマの優しい声と、そっと降る唇の感触。
最後に聞いたのがロドニーの喚き声なんて、気分がいいやら悪いやら。
ともかく、おやすみ。みんな。