君色を探して



・・・



『でれく』


たどたどしく呼ばれた時は、本当に嬉しかった。
短い腕を広げ、危なっかしく駆け寄られて。
思わず抱き留めてしまい、申し訳なさを覚えたことなど数えきれない。
だが、そのあどけなさも束の間のこと。

年を重ね、彼が自分の置かれた状況を察するようになると、その明るい笑顔が陰り始めて。
自暴自棄になったのだろうか、デレクの手に負えない時もしばしば。

だからと言って、放っておけるはずもない。
不敬罪覚悟で、叱り飛ばしたりもした。
いいのか、悪いのか。
誰も咎める者はいなかった。


『アルバート様!! 』


横目でチラリと見る、実父の視線。
それが悲しくて泣きたくなるのは、実はアルバートだけではなかったのだ。


< 19 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop