君色を探して



だが、やはり大きな傷を負ったのだ。

“療養生活”が始まってからのアルバートは自棄になっていた。
一言も口を利かないと思えば、勝手にいなくなったりする。
その都度大声で叱るが、あまり効果はなく。


(……それもいいのかもしれない)


彼がいい子になりすぎた方が、デレクには怖かった。
考えようによっては、これでよかったのかも。

兄に張り合うのを、とうに諦めてしまったアルバート。
強い劣等感に苛まれているようだったが、その必要は全くない。
彼は優秀であるし、そもそもこんな小さいうちから優劣を比べてどうする。
欲目もあるが、デレクの目には既に誇らしかった。





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