君色を探して
「そのような無茶苦茶な……」
何を言い出すのかと思えば。
「私までそう呼ぶのは、申し訳ないですけど……」
「いえ、そういうことではなく」
ジェイダに呼ばれるのが嫌な訳ではない。
しゅんとしてしまった彼女に、慌てて首を振った。
「私も、もう面と向かって言える人はいませんし。デレクさんには、たくさん良くしてもらいました。だから、勝手に思っちゃうんです。お父さんみたいって」
「……大層なことは。第一、ロドニー殿に悪い」
大したことはしていないどころか、ジェイダ自身を助けた記憶はない。
これほど好意をもたれて、罪悪感すら芽生えるというのに。
心優しく、真っ直ぐな青年。
彼は今、天で何を思うのだろう。
「もちろん、お父さんもお父さんですけど。でも、私嬉しいんですよ」
嫌な思いも、数えきれないほどしただろう。
彼女の味方は、当初とても少なかった。
その中に自分がいたとは、とても言えない。
「大切なひとが、こんなにいる。ジンも兄さんも、アルフレッドやエミリア様……それにデレクさん。ほんの少し前は、出会う可能性はほとんどなかった人たち」
それが、こんなに近くに。