君色を探して
「ちょっと」
声が聞こえて、驚いて振り返る。
ジェイダも同じだったが、彼女が体を捻る間もなく後ろから抱きすくめられていた。
「僕の名前がないよ。一番に出てくるはずじゃない? 」
「……っ、ロイ!! いつからいたの?」
こんなところ、これまで見たことがなかった。
火遊びをしたことがないとは言わないが、ロイが誰かに執着するのは初めてだ。
それより――。
「今帰ったばかり。ただいま」
嘘だ。
ずっと聞いていたに違いなかった。
「ロ、ロイはその、あの……とにかくね! 」
クスクスと笑いながら、彼は恋人を解放した。いや――。
(……よかった、ロイ様)
婚約者。
ほんのすぐそこの未来、妻となる女性だ。
それも、彼が本当に想いを寄せるひと。
「今日からデレクさんは、私のお父さん。だから……」
不安げに見上げる、ジェイダの頭を撫でた。
ロイの視線と手つきから、それがこちらまで伝わってくる。
「そう。ジェイダが決めたなら、諦めないとね。……父さん」