君色を探して
「………ロイ様」
なんて声をしている。
もっと難色を示すべきなのだ。
そんな呼び方はやめなさい。
貴方はそんな立場ではないでしょう。
いつも通り、ただ『デレク』と呼び捨てれば――。
「……っ」
ジェイダが息を飲むのが聞こえる。
ああ、あの子はどこだ。
どうして何も見えない?
立派になり、幸せそうな様子から、片時も目を離したくないのに。
「様付けなんて、もうさせない。貴方はずっと、僕の父だ」
何故、こうも涙が止まらないのだ。
・・・
「……まったく。頑固で困る」
文句を垂れても、幸せいっぱいの二人にはまるで効かない。
カップを洗うと言って席を外してくれたジェイダは、まだ戻ってくる気配がない。
「僕ですら、彼女の頑固さは手に余るんだよ。それを父さんが敵う訳ないじゃないか」
「お二人ともです! 」
大声を出しても、ブツブツ言っても。
ロイは余計に楽しそうに笑って。
「愚かな質問をしてもいいですか」
「ん? 」
皮肉も自嘲も見えない、穏やかな笑み。
それを見れば、愚問でしかないが。
「幸せですか」
(聞いてみたいのです。貴方の口から)
「うん。……とてもね」