君色を探して
「その敬語がなくなれば、もっと幸せなんだけど」
「…………すぐには無理です」
二十年こうなのだ。
急に変われようはずもない。
「練習あるのみだって、さっきジェイダが言ってたよ」
「……………」
我が子だと、本人の前で認めるようになっただけでも大きすぎる変化だ。
「僕からも質問。……幸せ? 」
「はい、とても。貴方が私のもとへ来てから、ずっと」
分かりきったことを、ロイも不安そうに尋ねてくる。
大きく頷いてみせると、ほっとしたように頬を緩めた。
「いつだって貴方が幸せなら。……ロイ」
固まる彼を背に、退散する。
「ちょっ……、今」
「ほら、行きますよ。ジェイダ様をお手伝いしましょう。この時代、男も家事ができなければ」
二度は呼べない。
まだ、今のところは。
「……はいはい、頑固者。そうだね、僕も簡単なことからできるようにならないとな」
「いい心掛けです」
しばらくは大変だろうが、二人ならそれも楽しくやっていける。
「いつか、いい父親になれるようにね」
「……ええ、もちろんですとも」
とはいえ、いくつになっても可愛い子供。
「私の苦労が分かるでしょうな」
「う……おしめの話はもういい」
不貞腐れるロイに笑い、今度こそ歩き出す。
あたたかな思い出を胸に抱き、何てない会話を楽しみながら。
【Derek・終】