君色を探して
祖母は変わり者だった。
……そう言われていた。
『クルルの人たちと仲良くなれたなら』
そんな口癖のおかげで、まわりは苦労したらしい。
だからどうした。
その、どこがいけない?
少なくともジンには、素晴らしい祖母だ。
祖母亡き後、兵に志願した。
純粋にこの国を良くしたいと、祖母の夢を忘れないようにと。
でも――。
あの頃はまだ、たった一人の老婆の夢さえひどく遠すぎた。
・・・
「よう、バー・ジニ・ア」
打ち合いの最中に、相手の男が話しかけてした。
「見事だが……戦う間は邪魔じゃないか?」
褒められたのは剣技ではない。
露骨な視線の先には、豊かな胸があった。
「…………」
不愉快だ。
鍛練場で野次馬に囲まれるのも、卑しい声が本名を呼ぶのも。
「ふん……」
大したことではないと、鼻を鳴らす。
(いつものこと)
いつものことだ。
何と言われようと、相手が余程ではない限り負けはしないのも然り。
軽くいなすと簡単に地べたに転んだ男を見下ろし、ジンは笑った。
「そっちはいいわね」
「ああ!? 」
その体勢で吠えるなど、更に笑える。
「小さく収まって、邪魔にならなさそう。羨ましいわ」
たっぷり時間をかけてその箇所を眺めるのを、ジンはもちろん忘れなかった。