君色を探して


「貴方は反対なのでしょう、ロイ様。貴方こそなぜ、放っておくのですか。始終目を光らせているなんて、疲れるでしょうに」


監視されるのも精神が削られるのだ。
お互い、そう思っているのだから――。


「僕に手を下せと言うの。夫の手を汚したくないから、傷つけたくはないから。君が興味のない僕に、自分を殺せと」


知っていたはずだ。
わざと一人きりでいたり、アルフレッドの目を盗み、この身を晒していたことも。


「意外と分かりやすいね、エミリア。君はもう、兄さんを……」

「ロイ様に言われたくはありませんわ」


――その先を言わせるものか。


この咎が身体に刻まれて消えないように。
想いだって、深くに沁みて取り出すことはできはしない。
まして、他の男なら尚更だ。

一瞬ふと真顔になった後、場違いに彼は笑った。静かな庭で、大声を出して。
エミリアの記憶の中で、一番自然な――不謹慎だが――楽しげな笑顔。


「嫌だね」


笑いを止め、こちらを見据えると意地悪く唇の端を上げて。


「嫌だ、って言ったんだ。ジェイダは悲しむだろうし、何より僕の信念に反する。どうして君の為に、僕がそんな真似をしなくちゃいけない? 」


恐らく、ジェイダが目にすることのないロイの表情。
軽蔑にも似た瞳だったが、別に気にならなかった。
恐れているのは、この男の目ではないのだ。


「実はね、僕は知っているんだ。君の足枷の理由を」

「え……?」


どうして、ロイが。
自分すら知らないことを、彼が教えてもらえるのだ。


(……いいえ)


それも納得のいくことだった。
先程、自分で言ったではないか。


――信用されていないのだ、と。


「その感じだと、君はずっと気づかないだろ。だから、教えてあげる。僕の声で悪いけどね」













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