君色を探して
「馬鹿なことを言うな。そんなものがなくとも、私は貴女を殺せる」
剣を払おうとする夫を、エミリアは承知しなかった。
「それでは、さっきの言葉を取り消さなければなりませんわ」
そうでないと気が済まない。
(……いつから、こんなに我儘になったのかしら)
許しを請うてはいけないのに、この剣はエミリアにとっての救いなのだった。
「……それは困る」
ポツリと言われ、満面の笑みが広がる。
心の中も、喜びでいっぱいだった。
・・・
アルフレッドは優しかった。
以前なら、嘆いただろう。
乱暴にされるほどの魅力がないのか。
つい急いてしまうほどの、愛情はないのか……と。
それが、こんなにも心地いいとは。
嬉しさで震えるなんて、エミリアは初めて知った。
「ずっと、伸ばしていらっしゃるのですか? 」
恐る恐る、彼の垂らした髪に手を伸ばす。
あまり身なりに興味のなさそうなアルフレッドだが、羨むほど綺麗な長い髪だ。
「……そうだな。切れば、脆く崩れそうな気がする。まあ、単に面倒ということもあるが」
理由など、訊けない。
触れることを許してもらえただけでも、勿体ないことだ。