君色を探して
Neil(and……? )
Neil(and……? )
「寒いですね、兄上」
初めて足を踏み入れる地。
興奮してドキドキする一方、不安も大きかった。
「これでも暖かくなった方だ」
そう言って兄・キャシディは笑う。
ここ最近、彼はこんなふうに笑うようになった。ふんわりと、優しく。
そんな顔を見ると、やっぱり大丈夫だなと思える。
たとえ、以前は敵対していた国の城門にいたとしても。
「ようこそ、キャシディ。ニール殿も」
知らない声が聞こえ、顔を上げる。
そこには、大柄な男が一人立っていた。
「アルフレッド。王様が一人、突っ立っているものではないだろう」
トスティータ王その人は、後ろに控える男を寄せず、ほぼ丸腰で立っていた。
「同じ言葉を返させてもらおう」
(まさか……? )
頭上を見上げたり、辺りをきょろきょろしたり。
だが、どこにも伏兵らしき影は見当たらない。
「妃が楽しみにしている。お疲れでなければ、顔を見てやってほしいのだが」
「……それでいいのか。第一、大事なお身体では? 」
第一子懐妊の知らせは、クルルにも届いていた。
これを期に、何かまた起こるのでは……そう危惧する声も少なからずあったが。
「あいつの希望だ。それにどちらかと言うと、ニール殿が待ち遠しいらしい」
「えっ!? 」
予想外の言葉に、激しく動揺してしまう。
兄のおまけ程度に考えていたし、事実そうに違いないのだが。
「ああ、気になさることはない。こんな可愛らしい来客は、あまりないのでな。ただ楽しみにしているだけだ」
そう言われても、どうしていいか分からない。
トスティータ王妃とは、どんな人物だろう。
大層な美姫だと聞いているが、気位の高い面倒なひとだったりはしないか。
兄に迷惑をかけるようなことだけは、絶対に避けなければ。
「ニール殿」
「は……はい! な、何でしょう? 」
ガチガチに緊張しているニールに向けられたのは、優しい微笑。
全く似ていないと思っていたのに、どこかあのひとを想起させる。
「ロイが不在で申し訳ない。面白味のない城かもしれないが、ゆっくりされよ」