君色を探して


兄とアルフレッドが話している間、少し離れたところで見守ることにする。
もしかしたら、エミリアと二人きり……なんて期待と心配をしたのだが。
政治的な話が始まると、彼女は自分から部屋を後にした。
身重であるし、そう面白い話題でもないから普通といえば普通のことだ。


(……暇だ)


不謹慎だが、手持ち無沙汰で仕方ない。
見張りらしき兵はいるものの、それほど強い監視は感じない。
視線の先にはキャシディだけで、幼い弟には注意を向けていないらしい。


(平和だな)


もう少し前なら、もっとピリピリしていたに違いない。
否、そもそも国王となった兄と一緒に、ここにいるはずもなかった。

「あの事件」がなければ、兄の即位もまだ先のことだっただろう。
それくらい父の――先王の力は強かった。
よもや、あんな形で失脚するとは誰が予測できただろうか。


(よかったんだ、これで)


暗く沈みそうになった心を、どうにか上向きにする。
厳しい父だったし、期待に応えきれず兄のもとへ逃げ込んだことも沢山あった。
それでも父は父なのだけれど。
それを言うなら、罪は罪だ。




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