君色を探して


『あんまり豪華だと緊張しちゃうわ。もう、あんなに大勢の人の前に出るなんて無理だもの』


はにかんで笑う彼女に、ロイも困ったように肩を竦めて。


『君は度胸あると思うけどね。……本当にそれでいいの? 式の規模を小さくしたって、他のものまで質素にする必要はないんだよ』


華やかで、上質なウェディングドレス。
大輪の花々。
凝ったレースをあしらったヴェール。


そのどれも準備するのは大変だが、二人にとっては可能なことだというのに。


『いいの! 私ね、自分や大好きなひと達と準備するのも夢だったんだ』


と、ジェイダは言ったものの。


「ごめんなさい、ハナさん。付き合ってもらっているのに愚痴なんて」


彼女は何というか、かなり不器用だった。


「ロイには内緒にして下さいね。あんな大見得を切っておいて、この有り様だってこと」


ばつが悪そうにする彼女に、ロイはとっくに察しているだろうことを教えるべきか悩み――やはり言わないでおいた。


「まあ、今の若い子はそんなもんさ。時間はあるんだし、そのうち上手くなるだろ」

「そ……そうですか? いえ、そうですね! 頑張ります」


この様子だと、ちょっとばかり不格好な仕上がりになりそうだが。


「ああ、その意気さね」


頑張りやの花嫁さんだから大丈夫。
きっと、可愛らしいヴェールが出来上がるだろう。



< 54 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop