君色を探して


『もう、諦めて閉めたらどう? 』


そんな提案を、一体何度されたことか。
しかし、ハナはそうしなかった。否、その方がいいんじゃないか。
固執せず、他に幸せを見つけた方が楽ではないか――そう思ったことは数えきれないが。
自分でも誤算だったのは、そう言われるほど意固地になってしまう性格だった。


(顔を見る度に店を畳めって、うるさいったら)


カッカしながら、バタンと叩きつけるようにドアを閉める。
多少乱暴になったっていいではないか。
どうせ、誰もいないのだから。

反抗心がなかったとは言えない。
正直自棄になっていて、ハナは静寂を望んでいた。


『……っ……? 』


足を踏み入れたとたん、息を飲む。

何だ、ここは。
暗く鬱蒼とした、誰も近寄らないこの場所。

危ないから、近づくのはやめなさい。
魔物が出るかもしれないわ。
そうじゃなくたって、悪い人に捕まってしまうかも――……。

そんな大人たちの嘘が、一気にバレてしまった。
だってほら、見てごらん。


『綺麗』



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