君色を探して
『トスティータの人を初めて見たわ。こんなに近くにいるっていうのに、おかしいと思わない? 』
この美女は、初対面でしかも敵国の人間相手にいきなり核心を突いてきた。
『……こっちだって初めてだよ』
唖然としてそう言うのが精一杯だったが、彼女は更にガツンと一言。
『そうよね。こんなの、やっぱり間違ってるわ』
驚きや呆れを通り越し、ただ感心するほかなかった。
誰もいない森といえど、万一聞かれようものなら非難を浴びるだけで済むのか。
だというのに、ハナより年下に見える若い女性はちっとも臆すことなく。
『お互い初めてね! 』
そんなことを言うから、つい笑ってしまった。
名前は訊かなかった。
訊く勇気がなかったと言った方が正しいかもしれない。
彼女も察してくれたのか、訊ねられることもなかった。
『そんなこと言っていいのかい? 』
『構わないわ。どうせ、誰も聞く耳もたないしね』
可愛らしい外見だが、わりと負けん気も強そうだ。
だが、そういう人は嫌いではない。むしろ、好きだ。
『ねえ、せっかくだから色々聞かせて。やっぱりトスティータはひんやりしてる? 』
まさか、間者ではないか――そんな妄想が生まれなかった訳ではないが。
『ヒンヤリなんてものか。それを言うなら、クルルはぽかぽかしてんのかい』
つい、口を滑らせてしまう。