君色を探して


『……次、いつ来られるかしら』


打って変わってポツリと漏らす様は、ひどく弱々しい。


『だってね、私――……』


ざわり。

彼女の心を表すように、吹く風も不穏な音を立てる。


『それだけ言っときながら、諦めるのかい? 私にその花を見せてごらんよ』


真っ赤な花は、冷寒なトスティータでも鮮やかに映えるだろう。
今はまだ長く咲くどころか、持ち込むことすら難しいけれど。


『その時には、私もどうにかして宿を盛り返しておくさ。……いつか、あんたを泊めることができるくらいに』


いつか、そう――できる限り近い将来は。


『……そうよね! 約束よ! 』


打ち消した言葉の続き。
その時のハナには、知る由もないことだったが。
もしかしたら、何となく察していたのだろうか。
自分でも気がつかないうちに、そんなことは聞きたくないと。


『楽しみにしてるわ』

『ああ、私も。その男とどうなったかもね』


だって、知識としてはあったのだから。
加えて、目の前の彼女は若く美しく、ウイットもあり聡明だった。

きっと、信じたくはなかったのだ。
名前を訊いておけばよかったなどと、思いたくなかった。



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