君色を探して
・・・
『……って……女、何をする……!? 』
ロイ――療養でこの地を訪れたアルバートと初めて会った日。
王子様らしく横柄な態度を取る彼をひっぱたくと、側でデレクがあんぐりと口を開けていた。
『女、だって? せめて、立派になってからそう呼ぶんだね。そういうあんたは、まだ男にもなってないじゃないか。ちっちゃな坊っちゃん』
この話をすると、いつもロイは
「……僕、そんなこと言ったっけ? 」
そう言うのだが。
生憎、ハナはしっかり覚えている。
あの時、あの子は赤くなった頬を押さえ、笑ったのだ。
目を細め、唇の端を上げて。
(……子供がなんて顔するんだい)
『無礼だ。……でも、……』
――ありがとう、ハナ。
ぐれることすら叶わないアルバート。
見ていてとても可哀想だったから、ハナは彼を王子様だと思わないようにした。
事実、見た目はただの可愛い男の子だ。
引っ叩いたし、怒鳴ったし。
時には延々説教だって。
けれども、近所のうるさいおばさんにはなれても、友達にはなってあげられない。
だから、クルルの友人ができたと聞いて、ハナも嬉しかったのだ。
そう、あの日――アルバートが彼らを失うまでは。
『……来なかったよ』
毎日、同じ報告。
『……そうかい』
アルバートは何も言わない。
泣くことも、怒ることもせず。
ただ、日が暮れてからの小一時間を過ごしていく。
夜遅くまでいることはない。デレクが心配するからだ。
『ねぇ、ロイ坊っちゃん』
顔を上げた彼の瞳には、やはり涙は浮かんでいなかった。
ロイと名乗るようになってからは、子供らしい表情も見せていたのに。
『いつか、あんたが望むものが……大切だと思えるものが手に入りますように』
『……ありがと。でもさ、ハナ』
――それって、何かな。