君色を探して
あの会談で、キャシディ自身の意見などほとんど含まれていなかった。
(体のいい使い走りだな)
何て様だ。
結局お前は、何がしたかった?
アルバートへの八つ当たりか、あまりに小さな父への反発か。
ただし、「現状維持の方がまだマシ」というのは本当にこの口から出たものだった。
今更、この国々が仲良しこよしというのも難しい。
反対意見も多くでるだろうから、国内紛争や分裂に発展しかねない。
そんな折を、他の国に狙われたらどうする。
実際のところ、本心では互いを悪く思っていない。
今は、それでもいいのではないか。
新たな罪悪を生まない為にも。
あの雨は、一体何だったのか。
まるでそんな「見ないふり」を咎めるように、天から降り注がれる。
言われたように、祈り子の力など信じていない。
早いところ、偽物だとそんな力はないのだと――皆に告げたかった。
その後は罰せられることがないよう、側に置くか逃げる手配をしてやりたかった。
しかし――。
『何故、奪って来なかった!? あの遊び人が手を出したらどうする! 』
『……アルバートにはできないでしょう。あれは見かけだけです』
今回の祈り子がそう美人ではなかったことや、今後は二人の仲が進展するかもしれないことは伏せておく。
(つくづく馬鹿げた伝説だ)
不思議な力をもった娘は皆未婚で、経験のないうちだけ効力を発するなどと。
『父上こそ、何故あの娘に拘るのです。見たところ、何の特技もないようでしたが』
『……あれは特別だ。そう決まって……』
眉を上げると、父はその先を飲み込んだ。
『お前の目が節穴なのだ。私には分かる……きっと、その女に力があると』
意味不明だ。
顔に出ていただろうか、父は不愉快そうにキャシディに背を向ける。
(……何を隠している? )
今頃は眠っているだろうニールを思い、キャシディは目を伏せた。