君色を探して
・・・
「邪魔をしたな」
少し、過去を振り返りすぎたようだ。
自分がいては、悲しむことも懐かしむこともできまい。
それよりもできることが、やらねばならないことが山程ある。
「いいえ。むしろ嬉しいです」
なのに――……。
「あの、キャシディ様。よかったら……」
遠慮がちに、とっさに隠したそれに目を向ける。
「供えて頂けませんか? その花」
用意させた赤い花。
他の花の方がいいのでは……そう思いながらも、使用人に告げるのはあの赤い花だ。
まだ他が手に入りにくいのもあるが、口にするのはいつもこの花の名前。
「綺麗ですね」
そんなことが言えるのか。
この平凡な女は、何故こうも強くいられるのだろう。
否、今の彼女は、この過酷な状況でも咲くことができる手元の花のように。
「……ああ」
――美しい。
再び屈むと、ジェイダは慌てていたが。
キャシディは気にせず、花を手向けた。
(貴方たちのもとには返してやれず、申し訳ない。だが……)
アルバート――ロイの腕にいる。
息子同様の彼に無事に戻せたのなら、少しは二人も安心してくれるだろうか。