君色を探して
「失礼する」
「あ、キャシディ様! 」
今度こそ背を向けたのに、ジェイダはなおも引き留めた。
「キャシディ様がいつもいらっしゃるの……教えてくれたのはロイですよ」
(……阿呆。余計な真似を……)
何の意味があって、わざわざ教えた?
嫌味か、皮肉か。
それは考えすぎだとしても、一種の牽制ではあるかもしれない。
頬が熱くなるのを抑える為、キャシディはそう考えることにした。
(……ならば)
「伝えておけ。私に余裕を見せるなと」
「……? はい」
小首を傾げるジェイダに笑うと、キャシディはその場を後にした。
少し、救われた気がした。
『ありがとう』が、以前よりも辛くない。
まだ完全に気にならない訳ではないし、恐らくそんな日はこないだろう。
『貴方が気になさることはない』
そう言ってくれる人もいるが、それでは済まない。
何より、キャシディ自身が許せないのだから。