君色を探して
・・・
「あの……今日はどうなさいます? 」
そろそろ、前回手向けた花も枯れる頃だろうか。
そう思っていると、侍女が遠慮がちに尋ねてきた。
「ああ、頼む」
「お花はいつもの通りで」
軽く頷き、積み重ねなれた書類に再び目を遣ったが、今日は彼女の去る気配がない。
「珍しい方ですね。あの花を好まれるなんて」
どういう意味かと目を上げると、視線を返すことなく頭を下げた。
「申し訳ありません……! お相手を悪く言うなど……」
ああ、そういうことか。
どうやら、特別な女性への贈り物だと勘違いさせていたらしい。
「いや。別にいいが……」
叱責を受けるとビクビクしているのだろうか。見たところ、自惚れでないなら……。
「お前は? 」
「はい? 」
それとは異なる。
そういえば、準備を頼む度に悲しそうにしていたような。
「お前は嫌いなのかと訊いている」
「いえ! そんなことは……」
せっかくの綺麗な花だ。
「ならば、一輪持っていくといい」
たまには、こういうのもいい。
「えっ……!? 」
忘れられないことも、忘れてはいけないこともある。
それでも、これが悲しみだけの色にならないように。
「嫌なら、無理にとは言わないが」
「……っ、頂きます……!! 」
真っ赤になって即答する彼女に、こっそり笑みをこぼす。
そんなに喜ぶのなら、次回は自分で手配してみるのもいいか。
そんなことを思い浮かべながら。
【Cassidy・終】