君色を探して


膝を折ると、アルバートは首を振った。


「僕じゃないよ。クルルの乙女――そう呼ばれる、ただの女の子。それでも構わない? 」

「……正直に言えば、よく分かりません。まだ会ったこともないのですから。でも……」


彼の、祖母の願う未来を見てみたい。
先程の場所に戻り、鍛練に励んだとして、一体何が得られるのか。
下品な言葉と視線を浴びせられ、耐えた先に己の望むものがあるのか――。


「一人であの場に戻るなど、まっぴらです。責任もって、仕事を下さらないと」


クスリと笑って、アルバートが手を差し伸べてきた。
立ち上がりその手を取ると、意外にも大きくて驚いてしまう。


「……よろしく」

「しかし……それにしても、無策がすぎるのではありませんか。大体、どうやって拐うおつもりで? 」


連れてくるには、当然ながら出向かねばならない。
国境を越えるどころか、彼女の住む町中まで。


「それは大丈夫。あの森で落ち合うことになっているから」


アルバートの言う森とは、もちろん禁断の森のことだ。
トスティータとクルルの間にある、美しい森。
訪れたことはないので、言い伝えによるとそうらしい。


「落ち合う? クルルの乙女とですか? 」


眉をひそめると、彼は困ったように頬を掻いた。



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