君色を探して
妃殿下は、とても儚かった。
もう少し強かったなら、アルバートも変わっただろうか。
『今は危ないからと……母君が臥せっているからだと、何故仰せにならないのです』
城内は、不穏な空気が流れている。
反国王派がアルバートを懐に入れようという動きもあれば、 逆にアルフレッド諸とも消してしまえという思想も存在した。
『言ったではないか』
『言い方があんまりでは? この私が、そう申し上げるほどに』
見るからにデレクは憤慨していた。
普段はあまり感情を顕にしないデレクだが、相当頭にきたのだろう。
加えて、母である王妃の具合も思わしくなかった。
あまり丈夫ではないアルバートに、移したくはないとの配慮だったが。
『あれは王には向かない。ならば、みすみす危険に晒すこともなかろう』
アルバートを守る為。
王座に座るアルフレッドはそうもいかずとも、せめてあの子は――……。
『向きませんか。貴方様のおかげで多少捻くれてはいますが、兄君に劣らず優秀では? 』
寧ろ、アルバートの方が要領がいい気もするが。
『向くものか。……アルバートは優しすぎる』
そう漏らした本人の目も、同じく優しすぎたのだ。
『貴方ほど不器用な人間はいませんよ』
『お前に言われたくはない』
似ているのだろうか。
そうは言ったものの、何となく気持ちが分かる。
見せかけだけの善人になるよりも、見せかけの悪人面を貫く方が、ずっとずっと難しい。
そして残念ながら、世の中にはそういう悪役が必要になる場面がある。
『だから、言ってやったのだ。お前も同じ道を辿らぬように』
余計なお世話だ。
若いキースは、心の中で笑う。
生憎と、この役が気に入っている。
嘘くさい英雄になるよりも、他にできることがある。
(……信じるものの為に)