君色を探して



・・・




「薄氷の目……」


そう言われて何年も経つ。
その間に、もう凍りきってしまっただろう。
厚く張った氷は、溶けることも割れることもない。
だから、こうして日を浴びたとて――……。


「もっと綺麗だと思います。キースさんの目」



信じられない言葉に振り返ると、そこにはジェイダが突っ立っていた。


「いきなり現れて、何を仰るのです」


二人で結婚の報告に来るとは聞いていたが。
彼女を一人にするとは、ロイは何を考えているのか。


「お一人で私に会いにきて下さるとは。嬉しいですが、感心しませんね」


初めて会った時、彼女は怯えていた。
それでいて反抗的な瞳は、こちらのことを良く思っていたはずもないのに。


「すみません。たまたま通りがかったら、聞こえてしまって……」

「それよりも、迂闊なことは口にしない方がいいですよ。他の者が聞いたら誤解します」


祈り子は――否、ロイの花嫁はあの冷酷な男にたぶらかされていると。


「気遣いは身を滅ぼします。お気をつけて」


そんな男を知っているのだから。


「そんなんじゃありません。確かに最初は怖かったけど……私の思い込みでした」

「その警鐘は間違っていないと思いますよ」


あの時、彼女を犠牲にしようとしたのは事実だ。
量ってはいけないことを量る。
あれから雨が降らなければ、ジェイダはここにいなかったのかもしれないのだ。


「いいえ。さっきのキースさんの目は凍ってなんかなかった」


――すごく、優しい青色でした。



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