君色を探して
(……憐れ、かもしれませんね)
小娘の言葉に、内心すごく動揺している。
チクリと刺してくるようで、どこか悲しくふんわりと温かい。
そんな何とも知れない感情が、まだここに残っているとは。
捨てきれないというのは、あのひとの言う通り――。
「ジェイダ…!! 」
ロイが叫ぶように呼び、思考を遮った。
「こんなところにいた……! 」
城内を走り回ったのか、彼の息は切れている。
「何をしていた……? 」
だが、すぐにジェイダの前に身を滑り込ませると、低く唸るように尋ねてくる。
「これは心外です。話しかけて下さったのですよ。“奥様”の方から」
にっこりしてみれば、ロイは不満そうに鼻を鳴らした。けれども、事実は事実だ。
「君ね……ふらっといなくなって、どれだけ僕が心配したと思ってるの。やっと見つけたと思ったら、キースと一緒だなんて」
「……ごめんなさい」
夫からの説教を、暫し堪えていたジェイダだったが。
「大体、何でこんなところに……」
その質問に目を泳がせる。
「……迷ったね、ジェイダ」
どうやら、道を尋ねたくて近づいたようである。
きっと、話しかけようか他の人が通りかかるのを待つかで迷っていたのだろう。
「くっ……」
平和なことだ。
自分を利用しようとした人間に、帰り道を尋ねるなど。
(さて。この先、そんなお気楽が通じるような情勢になるやら。……貴方も実は楽しみでしょう? )
込み上げてくる笑いを抑えきれず、ジェイダとロイがぽかんとしている。
その暢気な顔は、更に可笑しい。
「奥方から目を離さない方がよろしいかと。随分、可愛らしい方のようですからね」
無意味な挑発に、ロイは気分を害していたが。キースの心は晴れていた。
何となく、あの雲の切れ間が清々しいとすら思えるように。
【Keith・終】