君色を探して
Alfred
Alfred
自分でも驚いていた。
今組み敷いている女に、これほど熱中する日がこようとは。
確かにエミリアは美人だし、夫婦となった以上はそれなりに愛情も生まれるものだと――生むように心を寄せるよう努めようと――そう思っていたのだが。
「あの……」
彼女はいつもこうだ。
嬌声とはまた別の、声とも言葉とも違う音を漏らしながら、けして最後まで言わない。
「言わねば分からない」
そして果ててから、そう促してやっと口にするのだ。
「すきです……」
その言葉が、まるでとんでもなく罪であるかのようにエミリアは言うのだ。
世の中には、思っていなくても囁く人もいるというのに。
彼女が負い目を感じていることも、その理由だって分かっている。
不憫であるし、アルフレッドがただの男であったなら耐えきれず言ったかもしれない。
『もう気にしなくていい』
『いろいろあったとしても、今は想い合っているのだから』
――と。
だが、それは許されない。
事情を知るものは僅かだが、キースを筆頭に「何の刑もないとは」と不満を漏らす者もいるのだ。
それに正直に言うと、少し嬉しくもある。
自分を騙そうと、籠絡を目的としていた頃のエミリアなら、そうじゃなかったと思うから。
これほど苦しそうに、それでも伝えてくれるその言葉は真実だと――とても深いのだと実感できる。
(本当に、こんな日がくるとはな)
寝台でのことに限らず、出かける前も、部屋に戻ってからも。
特に理由がなくとも、抱き合ったり軽く唇を落とす。
そんな日がくるとは、そんなひとに出逢おうとは、アルフレッドにとっては大きな誤算だった。