FUZZY
「……」
「……」
ちゅっ
柔らかいものが渇いた唇に触れた。
気のせいじゃない。
たしかに私の唇に、触れた。
男の子とは思えないほど優しい力で手首を掴み、そっと私を見上げる碧生くんの唇が再び押しつけられる。
何度も、何度も。
口を開けば確実に舌が入る。それだけはどうしても阻止したかった。
きゅっと結んだ口元にこれでもかってぐらいキスをして、そのたびに「理乃さんとちゃんとキスしたいよ」「俺のキスに応えてよ」って泣きそうな声で訴えかけてくる。
「っや、やだ!!」
嫌なわけじゃないのに。
私だけが碧生くんを好きな気がして、いや、実際そうなんだろうけど。あの子にも、こんなふうにキスをねだっているんだろうなって思うと、そう叫びたくもなるじゃん…。