FUZZY





「……」

「……」


ちゅっ


柔らかいものが渇いた唇に触れた。

気のせいじゃない。

たしかに私の唇に、触れた。


男の子とは思えないほど優しい力で手首を掴み、そっと私を見上げる碧生くんの唇が再び押しつけられる。

何度も、何度も。

口を開けば確実に舌が入る。それだけはどうしても阻止したかった。

きゅっと結んだ口元にこれでもかってぐらいキスをして、そのたびに「理乃さんとちゃんとキスしたいよ」「俺のキスに応えてよ」って泣きそうな声で訴えかけてくる。



「っや、やだ!!」


嫌なわけじゃないのに。

私だけが碧生くんを好きな気がして、いや、実際そうなんだろうけど。あの子にも、こんなふうにキスをねだっているんだろうなって思うと、そう叫びたくもなるじゃん…。



< 116 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop