FUZZY
「……彼女って私のこと、だよね。私でいいんだよね?」
「理乃さん以外いないじゃん」
……ごもっともです、すみません。
でもこれではっきりしたことがひとつある。
『むしろ既に付き合ってるって思ってそうじゃない?』
ええ、侑芽のおっしゃる通りでした。
いまどきは「付き合おう」の言葉がなくてもお互いの気持ちが通じ合ったら、それはもう付き合っていると同じらしい。アラサーと大学生の考え方がここで食い違ってしまうとは。
「ごめん、碧生くん。私ね、碧生くんと付き合ってる実感がなくて、」
「えっ?!」
「だって、正式に〝付き合おう〟って話にならなかったし…?」
「た、たしかに」
「うん。だからちゃんと話したいなって思ってたんだよね。それなのに私の誤解でこんなことに…。情けない大人でこめんね」
「ううん、理乃さんはなんも悪くない!謝っちゃだめ!俺がもっとしっかりしていればこんなことにはならなかったんだよ。ほんと、頼りない男でごめんね、理乃さん」
ごめん、と言い合う私たち。
でもさ、今交わさなきゃいけない言葉って〝ごめん〟じゃないよね。
「あお、」
「理乃さん!」
「は、はい」
名前を呼んだら簡単に遮られて何度目かの抱擁をされる。