FUZZY
いるんだよね。幸せに乗っかって女引っ掛けようとする男が、たまに。心底めんどくさいな。
「あっちの二次会に参加しないって聞こえちゃって。よかったら俺と、まだあっちに友達いるんですけど、なにかの縁なので飲みません?瀬河さんも友達誘ってもらえば——」
「彼氏来るんでもう行っていいですか」
「え、彼氏?」
「はい。多分、そろそろ来ます」
それは嘘だけど。
お迎えはさすがに頼んでいない。
でも、ほら、これだったら「彼氏来るなら無理かー」って諦めてくれそうだし。いい策かなって。そこまでしつこそうには見えないし。
「あー…そうなんだ!じゃあさ、連絡先だけでも交換しない?俺、瀬河さんのこと綺麗な人だなって気になっててさ」
うわ、まじか。そうきたか。後日会おうって誘ってくるパターンのやつ。しかも彼氏いてもいいんだ。ってことは、遊び相手探してるだけじゃん。私はこいつのセフレ候補として選ばれただけか。……は?胸クソわる。
「すいません、携帯持ってないです」
「またまたー。手に持ってるじゃん」
「これ携帯に見せかけた鏡です。じゃ」
「ちょーっと待って、瀬河さん」
ああ、今日はほんとに幸せな結婚式だったな、結婚もいいかもなって、幸せルンルン♪の気分だったのにこいつのせいで一気に冷めた。
強い力で手首を掴まれて、振り解こうとしても無理で。
こんな時に浮かぶのは当然のことながら碧生くんで、「たすけて」って心で伝わればいいのにって、そう思ったんだ。
「手、離さないと噛みますよ、お兄さん」