FUZZY




うわあ!っという声と同時に離された手首は別のぬくもりによって包まれる。そのままぐいっと引っ張られて胸にすぽっと収まった。

柔軟剤の匂いと、抱きしめられた時の感触が安心へと変わった瞬間、私は彼を引き寄せてその唇にキスをした。


「おっと。急だね、理乃さん」

「ふふ、嬉しくて」

「嬉しいの?」

「うん、ヒーローがたすけに来てくれたから。私の気持ちが届いたんだーって」

「へへ。一本早い電車に乗った甲斐があった」


碧生くんは私のおでこに自分のおでこをくっつけてにっこり笑った。

来ないと思ってたのに、本当に来ちゃうんだもん。びっくりしちゃった。そりゃ舞い上がってキスしたくもなるよ。


「おい、もう行こうぜ」「なんだあれ!」「いや、でもめっちゃかっこよくね?」「ちょっと噛まれたい…」「わ、わかる」


「「「……世界広がるかも」」」


……馬鹿がいるよ。

世界、広げてくれてもいいけど碧生くんは渡さないからね。妄想とかもやめてね。


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