FUZZY
あと少しのところでれんげを持つ手が止まる。
「んー…私は、特に」
……碧生くんのことは……言えない。
それに侑芽はあの場に碧生くんがいたことに気づいていない様子だし、内緒にしておこう。
「まあ、運と好みだからね、こういうのは!」
初の婚活パーティーで三人との異性と運命的な出会いを果たした侑芽は無双状態だ。同期なのにこれに関しては大先輩と言っても過言ではない。
「楽しみだな〜」とオムライスを掬う侑芽を見て自然と笑みがこぼれる。絶対にうまくいってほしいと願う反面、突っ走るくせがあるからそこが心配だったりする。
「隣、座るぞー」
背後から声が聞こえてきたと思ったら頭の上に何かが乗る。その〝何か〟が食堂で使われているお盆だということはすぐにわかった。
「げっ、宮近」
「もっと色気のある声出せよ」
「は?うるさ。そいつどうにかしてよ、理乃」
侑芽は顔を顰めながら顎で私の頭上にいる〝そいつ〟をさす。私に託さなくても侑芽が追い払ったらいいのに。でも私がどうにかする方が手っ取り早いのかな。
……はあ。
「弘実、ちょっとうるさいかも」
「は?」
「あと、頭の上に置いてるお盆を退けて。さすがに重たいし痛い」
「はいはい」
適当に返事をした弘実は私の隣にお盆を置いて座った。
この男、宮近弘実は同期兼——幼なじみだ。